見知らぬ人に近づかれると、つい取る行動とは?

横断歩道で、信号待ちをしている人がいたら、その人のすぐ近くに立ってみましょう。信号が青になってから道路を渡り終わるまでのようすを観察してください。

ケース1突然歩くのが速くなった・・・その理由は?

歩道で信号が変わるのを一人で待っている、いろいろな年齢の歩行者かターゲットになります。信号が青に変わる10秒前に、歩行者と同性の20歳代の実験者が、その歩行者の近くに立ちます。2人の肩と肩の間隔が約30センチになるように、歩行者の右あるいは左側に立ちます。そして、信号が青になって、歩行者が道路を渡り、向かい側の歩道に着くまでの所要時間を計測します。実験者は、信号が青になっても横断しないで、もとの所にいます。

同じように、60センチ、150センチ、3メートルの場合も試してみましょう。信号待ちの10秒間に、実験者が被験者の近くに立てば立つほど、速く横断することがわかりました。この傾向は男女ともに同じでした。人は見知らぬ人に必要以上に近づかれると、その人から早く遠ざかりたいと願うので、自然と歩くのが速くなったわけです。特に、話しかけられるのが嫌な相手だったりすれば、一層この傾向がはっきりするものと思われます。

ケース2「知らない顔」をする人の心理

さらに勇気があったら、その歩行者の親切さを試してみましょう。実験の手続は前と同じですが、今度は、実験者も一緒に歩き始めます。そして、二つの条件で歩行者を追い抜いていきます。一つの条件では、歩行者が歩き始めたら、立っていた時と同じ間隔をおいて一緒に歩き始めます。途中まできたら、スピードを上げて追い抜いてしまいます。追い抜く時に、腕にかけていた上着からエンピツを落とします。これを追い抜き条件とします。

もう一つの条件では、実験者は信号が青になるやいなや大急ぎで歩き始めます。そして、歩行者の150センチほど前を歩きながら、さきほどのように、エンピツを落とします。これを先行条件とします。こうした条件の時に、歩行者が実験者に、エンピツが落ちたのを教えてくれるか、あるいは拾って渡してくれるかを調べます。

結果は、実験者が歩行者の近く(50センチ以内)にいる場合には、それより遠い(150センチ以上)場合に比べ、エンピツの落ちたことを教えてくれたり、拾ってくれたりする人が少なくなることがわかります。特に、途中で追い抜いた時には、60センチ以内で、この傾向が一層はっきりします。

自分の余りにも近くで起こった事柄に対して、あたかもそのことに全然気がつかなかったというように知らない顔をする、という人間心理が読み取れます。もっとも鍵を落とすという別の実験では、いずれの条件でも援助行動は抑制されなかったという結果が出ています。つまりほとんどの人が、教えたり拾ったりしてくれたわけです。

エンピツの場合に距離によって差が見られたのは、人は、あまり重要でないと判断した事柄については、できるだけ関与したくないと思っているという理由から説明できるでしょう。

— posted by pippin at 12:42 am