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会社一筋に滅私奉公してきたエリートは意外にもろい

昔からの友人にもやはり同じような境遇になった人がいる。彼も周りから「できるヤツ」と言われていた。東大を出て某一流銀行に入行して海外の支店長や本部の部長を歴任した絵に描いたようなエリートだった。ところがこの銀行も合併してメガバンクになった結果、彼も役員になり損ねたのである。

どこの銀行にも月に一回発行される行内報があるが彼の勤めていた銀行の行内報にはその月に退職する者が一行コメントを書く欄がある。彼は役員になれなかったのがよっぽど腹に据えかねたらしく何と「こんな銀行に勤めてバカをみた」と書き残したのである。普通こんな捨て台詞を書く退職者はいないから当時は行内だけではなく外部でも大いに話題を呼んだものだ。わざわざ一部取り寄せてみて読んだが本当にその通り書いてあったのでビックリした。

実は相談しに来た彼も私の友人の彼も同じようなことを語ったから驚いた。それはこういうことである。「なまじ同期の出世頭にならなかったらオレもきっと40歳くらいで見切りをつけたんだろうけれど役員の芽があると思ったからここまで引きずってしまった」ちなみに行内報に「バカをみた」と書きつけた友人は幸いにもお坊ちゃんの生まれだったためお祖父さんが創業した会社に移り、今は代表取締役の一人に名を連ねている。最近は「若い人のために上の年寄り役員たちにどう退いてもらうかだ」などと怪気炎を上げるまでに元気になってホッとした。

この友人は運良くよい転職先があったからハッピーとして、会社一筋に滅私奉公してきたエリートは自分は必ず偉くなれるんだと信じて頑張っている。ところが最後に来て「あれ?」と思った時にはもうあまり選択肢が残されていないというケースが圧倒的に多い。というのは、お付き合いのある経営者から「こういう人材が居たらぜひ紹介してくれ」と頼まれることが少なくないのだが、最近はその条件として「40歳前後で例えば経営企画部長が出来る人はいないか?」などと必ずと言っていいほど年齢制限が加えられるようになったのである。

ひと昔前なら50歳を超えていても全く問題はなかった。まして子会社の役員に飛ばされた前述の彼にしても支店長や部長の経験があるわけだから「喜んでお引き受けします」という会社が多かったのである。ところが昨今は50歳を過ぎると極端に「売れ行き」が悪くなるのだ。つまり採る側の発想が変わったのである。40歳ぐらいだったら使いやすいし十分に体力もあるし、そんなに変な癖もついていないなど色々な面でメリットがあるというのである。採る側がそう考えている以上、条件に合わない人が転職しづらいのは仕方がないだろう。だからこれからは早め早めに決断していかないと「オレは最後の最後によい人生をまっとうできずに終わった」という憂き目に遭うことになる。

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— posted by Chapman at 11:09 pm  

順調にエリートコースを歩いていたが銀行合併の嵐で年収が激減

ある銀行マンがやってきた。彼はいま50代前半である。彼とはもう20年ほどのつきあいになる。まだボストンコンサルティンググループ(通称BCG)で駆け出しの経営コンサルタント時代、大手自動車会社のコンサルティングをしていたときだ。どこからか私の名前を聞きつけて、コンサルティングの仕事をいろいろ教えてくれと訪ねてきたのが始まりである。

当時の彼は大手都市銀行の調査部にいたのだが、まだ社会的に認知されていない経営コンサルタントという仕事に興味を持って訪ねてくるくらいだから、なかなか勉強熱心な銀行マンだったといえる。実際に彼は、その後、順調にエリートコースを歩いていった。若くして地方の支店長に抜擢された。その銀行の歴史上いちばん若い支店長の誕生だったという。

東京に戻ってからも、40代のうちに2つの部署で部長を務めた。これなら「自分は出世コースに乗っている」と思ってしまっても無理はない。ところが、やがて銀行合併の嵐がやってくる。合併さえなければ、役員になるのは間違いなしといわれていた彼だが、その夢も消えてしまった。日本の大企業では、彼のように本社の役員になれなかった者たちは、子会社に移るのが一般的なパターンである。

彼も今年、子会社の執行役員に転籍することになった。その子会社は業績の悪い会社ではないし、来年には常務になれそうだが、仕事自体は自分のキャリアを活かせるものではなく、働きがいも感じないという。しかも、問題は年収が大幅ダウンしたことにある。じつは大手都市銀行の部長時代には2000万円あった年収が、合併でメガバンクになったにもかかわらず1600万円に落とされ、さらに子会社に移って執行役員になったというのに1200万円に下がってしまったという。それでも世間からみれば、このご時世にリストラに遭うこともない彼は、恵まれているほうだし、年収も決して少ないわけではない。常務になれば、年収アップも期待できる。

ただし彼のプライドが現状に満足を許さないらしい。銀行に残っている元の部下たちをみると、「そんなに大した能力を持った連中ではなかったのに」と彼が思っている人たちがM&A(企業買収)で活躍したり、VC(ベンチャーキャピタル)などのファンドを運用して何百億円という資金を動かしている。彼らにできるのなら、オレも転職してそういう仕事をしてみたい。あるいは、長年やってきた調査のキャリアを活かして、どこかのメーカーの役員に招かれて、経営戦略を練るような仕事をやってみたい。そんな希望がふつふつと湧いてきて、私のところに相談にきたというわけである。要は、「クライアントのなかで、よい転職先はないか」といっていることはよくわかった。

— posted by Chapman at 10:57 pm